「独ソ戦(岩波新書)」(大木毅著) 日本人の知らない戦争
日本人にとって先の大戦と言えば、太平洋戦争および太平洋戦争に至る日中戦争のことである。日本人の人的損害も約300万を超え、東京大空襲、広島・長崎への原爆投下、それに続く玉音放送と8月のこの時期は戦争を特集する番組や記事に溢れる。
学校教育の場でも、戦争といえばこのアジア・太平洋戦争が中心だ。
しかし、30年以上昔の話だが、私は中学の社会科の時間に第二次大戦に置けるもっとも甚大な人的被害を被ったのが実はソ連でありその数も2000万人を越えると学んだとき非常に大きな疑問を感じた。
確かに、アジア・太平洋戦争は日本にとっては忘れてならない重要な歴史事実であることは疑いはないものの、さらに壮絶な戦争がヨーロッパにおいてドイツとソ連の間に行われていたことはなぜ歴史の授業では深く取り上げられることはないのか?
当時知り得たのは、せいぜい、独ソ不可侵条約、ドイツのソ連侵攻、スターリングラードでのドイツの敗走、ベルリン陥落、といったキーワードの羅列に過ぎなかった。
しかし、第二次世界大戦開始から80年になる今年、本書が出版された。この人類歴史上類をみない壮絶な戦争を、特に、日本人が学ぶことができる。
特に、冷戦集結・ソ連崩壊後に新たに判明した事実を元にしており、過去の独ソ戦史の資料に大きな修正を迫ることになるであろう。
独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書 岩波新書) [ 大木 毅 ] 価格:928円 |
独ソ戦の中でスターリングラードの戦いを解説した和書としては、「戦略の本質」(野中、戸部、他)があるが、今回の「独ソ戦」でどの程度修正されるものであろうか。個人的には興味があります。
戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ (日経ビジネス人文庫) [ 野中郁次郎 ] 価格:972円 |