1970年代生まれの外資系IT企業エンジニア(関西在住))です。
様々な人々の叡智からの学びを通して、経済的独立の実現を目指します。
日々の思考の糧となる書籍を紹介します。


Sabine Hossenfelder, "Lost in Math: How Beauty Leads Physics Astray" 理論物理学の隘路

素粒子物理学というと物理学の中でも最も先端でかつ難解な領域である。 私も25年前に大学院に入学したときに素粒子理論を専攻したのだが、入学する前から素粒子物理学に未来があるのかという不安は学生の中でも共通したものであった。 この場合未来とは、素…

東浩紀「ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる」 他人の成長から何を学べるか

本書は、若いころから文壇やメディアで活躍されていた東浩紀氏がこの10年あまりアカデミアや既存の文壇とは異なる形の「ゲンロン」という事業を起業し、その経験を語り下ろしたものである。 起業家の語り下ろしは大抵は自慢話だったりすることが多いし、成功…

水木しげる 「ゲゲゲの家計簿」を読んで元気になった

水木しげるは、子供のころから「ゲゲゲの鬼太郎」でなじみがあったし、最近ではNHK朝ドラにもなったので「ゲゲゲの女房」が放送されたので水木しげるの人生については割と広くしられていると思うのだが、私はこの放送をほとんど見ていないので、この「ゲ…

通信教育の速読(クリエイト・ユーキャン)で3倍速度達成した

今年はコロナで在宅勤務ということもあり、比較的自分の時間をコントロールしやすい状況だったので、普段だったら忙しくてできないことでも取り組みやすかったと思う。 そこで、以前から興味だけはあった「速読」にチャレンジすることにした。 速読もいろん…

ブログ名の変更

ブログの名前を「隷属からの卒業」から改めました。 あまり、現在の自分の状態を「隷属」ととらえていると、気が滅入るな・・・とおもったからです。「卒業」といっても、本当にそんな「卒業」が来るのかわからないし、そういった「卒業」を夢見るほど自分も…

「この町ではひとり」(山本さほ) 知らない街で人生リセットの苦闘

人生の節目節目で辛いことから逃げ出したくなった時に、知らない街で人生をリセットしたくなる時がある人が多いと思う。 例えば進学や就職などで思うように行かずに、結果として知らない街で生活を始めることはよくあることだ。 「この町ではひとり」は、美…

「Learn or Die 死ぬ気で学べ プリファードネットワークスの挑戦」(西川 徹 、 岡野原 大輔) が、眩しすぎる

PFNという会社は5年くらい前から興味を持っていた。 当時はIT業界でAIブームが爆発し始めた頃で、国内外の大手ITベンダー(特に外資)が様々な技術やサービスをメディアに公開していた。 私自身は、AIブームがきても、日々AIと縁のないシステム構築に明け暮れ…

「岡崎に捧ぐ」(山本さほ著) 挫折からの回復

作者の小学校時代から漫画家になるまでのエッセイ漫画。 小学時代は元気で遊んでいた毎日だったが、中学・高校と少しずつ現実の壁のようなものに突き当たり、美大受験も2年浪人し結局あきらめ逃げ出し、もがきながら漫画家になるという成長物語である。 人生…

「帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる 」戸高 一成 (著), 大木 毅 (著)

呉の大和ミュージアム艦長の戸高氏と昨年(2019年)評判の高かった岩波新書「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」 の著者である大木氏の対談集。 私よりも約10年年長の世代は、先の大戦の当事者達に直接話を聞ける最後の世代と言える。1980年代には戦争中の士官クラスがま…

戸井 十月「小野田寛郎の終わらない戦い」

YouTubeで、小野田寛郎を扱ったNHK特集を観た。 小野田寛郎といえば、戦後約30年間フィリピンのルバング島のジャングルで生き延び、1972年に日本に帰還したことで知られている。帰国後、今の日本に嫌気をさしたのか、日本を去りブラジルで牧場経営を立ち上げ…

鴻上尚史「不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか」

先の大戦の後期、昭和19年10月のレイテ沖海戦(捷一号作戦)の敷島隊から始まる特別攻撃隊いわゆる特攻は様々な見解があるが、基本は否定すべき過去の出来事として扱われてきたと思う。 ただ、最近の風潮として、特攻を美化する傾向が多くなっている気もする…

先崎 学 「うつ病九段」(コミック版)

将棋プロ棋士の先崎九段のうつ病の闘病記が3年ほど前に出版され話題になりましたが、今回はそれを漫画化しより多くの読者に読みやすい形になりました。 うつ病になることは、身体的・精神的にだけなく社会的にも本人及び周囲の人々に大きなインパクトを与え…

福満しげゆき「妻と僕の小規模な育児」

福満しげゆきといえば「僕の小規模な失敗」が有名であるが、その中で描かれている、どうしても普通の人々が経験する平和で楽しい生活から脱落せざるを得ない小心でコミュ障な性格を持った主人公を見ていると、他人とは思えない親近感を覚えてしまう。と、書…

鈴木 敏夫「禅とジブリ」

禅とジブリの組み合わせの意外感に釣られて買ってしまった。 鈴木敏夫は元アニメージュの編集長で長年ジブリで宮崎映画のプロデューサーで、ジブリファンならお馴染みであろう。NHKプロフェッショナルにも出演していたし、岩波新書で「仕事道楽」という宮崎…

村上春樹「猫を棄てる 父親について語るとき」

村上春樹の新作エッセイの「猫を棄てる 父親について語るとき」が発売されていた(2020/4/23)ので早速KINDLEで購入して読んで見た。 村上春樹の故郷は西宮・芦屋で香櫨園で、私の家からも自転車で行けるところだ。エッセイの中でも身近な地名が出てくる。父…

シンガポールで経験した哲学の意外な人気

哲学に関心をもち続ける事に少しだけ勇気を得る事ができた話です。 哲学って、日本で仕事をしていると本当に必要性を感じることのない、むしろ関心を持っていること自体が時間の無駄に思われ、変に哲学の話をすると周囲から変人扱いされるため、自分の内奥の…

ちきりんさんの「働き方改革と不眠不休の狭間」と安富歩さんの「満洲暴走」

社会派ブロガーのちきりんさんの「働き方改革と不眠不休の狭間」を読んでみたが、自分自身の体験も同じような「不眠不休」の圧力を感じることが多かったです。 特に、2000年代の日本の製造現場でのシステム化に携わることが多く、その中で、顧客からのプレッ…

「同時通訳者の頭の中」(関谷英理子)・・・・英語力をなんとか身に付けたい

外資系IT企業にいると英語が必要なタイミングがいくつかあります。 昇進にTOEICスコアが要求されたりすることもありますが、時々海外出張があって英語でコミュニケーションを取る必要があります。 特に困るのが、完全ネーティブだけの状況に置かれた時です。…

「東京の戦争」(吉村昭)・・・・あちこちのすずさん的な東京の少年

この夏NHKで「あちこちのすずさん」という番組をやっていた。 太平洋戦争末期の空襲が日常になった中で、慎ましくありながら、逞しくも日常の幸せを求めるごく普通の市民のエピソードが語られていた。 そのような戦争の中の日常生活が語られるようになったの…

「幻の声 NHK広島8月6日」(白井 久夫 ) ・・・・この世界の片隅と併せ読む

原爆投下直後の広島でラジオの中から支援を求める声が流れていたというNHK視聴者の便りをきっかに、その事実を追い求める元NHKディレクターの手記である。 原爆投下直前・直後の広島やアメリカの原爆投下作戦の実行状況を念入りに追った優れたドキュメンタリ…

「遠い日の戦争」(吉村昭) 当時の人々の息遣い・・・「この世界の片隅へ」と併せ読むべき

この夏NHK地上波でも放送された映画「この世界の片隅へ」を観られた方も多いだろうと思う。「この世界の片隅へ」は2016年に公開されて非常に話題を生んだが、単に戦争の悲惨さをアピールするのではなく、当時の時代を生きていた普通の人々の生活を淡々と辿る…

「反応しない練習」(草薙龍瞬 著) シンプルに生きる方法論

人生って結構しんどいことが多いなと思う。この世は、理不尽さがまかり通る。 ブッダはこの世の中は「苦しみ」に満ちていると言っているが、まさにその通りだなと思う時が時々ある。 まるで、自分が旧約聖書のヨブになったかと思う時もある。そういう時はつ…

「THINK CLEARLY」(ロルフ・ドベリ著) 現代の幸福論 

私は結構人生論というか幸福論的な本が好きだったりする。 今の生活が不幸というわけでもないし、不満を言ったらきりがないことはわかっているが、世界の賢人たちが人生に対してどのように対応しているのか興味があるし、それらから可能なだけ学びを得たいと…

追悼 瀧本哲史さん

2019年8月10日に瀧本さんが逝去されたというニュースが昨日(8月16日)報道されていた。享年47歳だった。 瀧本さんは言わずと知れた投資家・京大客員准教授で、「僕は君たちに武器を配りたい」など著作が多数であり、日本の多くのビジネス・リーダ特にミレニア…

「社会人にもなって、努力や成長なんて必要ない」(勝間和代) Growth Mindsetはどうなるの?

リクルートの新R25に掲載されている勝間和代のインタビューが衝撃的だ。 要するに、自分の弱みに関してはどんなに頑張っても人並みになる程度ならば頑張るだけ無駄で、自分の強みを活かしていくことの方が重要だということだ。 無駄な努力は最初からするな・…

「岩田さん」(ほぼ日イトイ新聞・編) 岩田さんになぜか憧れる

2015年に急逝された任天堂の岩田社長(当時)について糸井重里のほぼ日イトイ新聞に掲載されているインタビューやコメントを編集した本です。 岩田さんは元々エンジニア(プログラマー)出身で、任天堂の社長になってもその感覚を維持した発言が、他の会社の…

「シャカの息子」(ジョージ秋山著) 巨匠の挫折と実力社会

おそらく少年ジャンプを愛読している(いた)ほとんどの同世代(70年代生まれ)も、さすがに「シャカの息子」を知っている人はほとんどいないと思う。 なぜなら、少年ジャンプでは読者に人気がない漫画は連載開始から10週で打ち切りなるという超過酷な競…

「日本の技術が危ない」(ウィリアム・ファイナン、ジェフリー・フライ著) 1994年に書かれた予言の書

本書が出版されたのは1994年で、当時はまだ日本のエレクトロニクス業界が世界を席巻していた。 私が高校生だった1980年代後半は、日本の製造業の勢い凄まじく、かつ日本に対する風当たりも強く、テレビニュースでアメリカ市民がハンマーで日本の電気製品を叩…

「独ソ戦(岩波新書)」(大木毅著) 日本人の知らない戦争

日本人にとって先の大戦と言えば、太平洋戦争および太平洋戦争に至る日中戦争のことである。日本人の人的損害も約300万を超え、東京大空襲、広島・長崎への原爆投下、それに続く玉音放送と8月のこの時期は戦争を特集する番組や記事に溢れる。 学校教育の場で…

米軍機による市民への攻撃@神戸三宮1945年

米軍艦載機による非戦闘員への攻撃の跡が未だにJR三宮駅の構内で見ることができます。 こんなに日常生活の近くまで米軍の戦闘機が攻撃していたことを実感させてくれます。 戦争の傷跡はまだ我々の身近にたくさん残っている。そして、それらを決して忘れて…