「日本の技術が危ない」(ウィリアム・ファイナン、ジェフリー・フライ著) 1994年に書かれた予言の書
本書が出版されたのは1994年で、当時はまだ日本のエレクトロニクス業界が世界を席巻していた。
私が高校生だった1980年代後半は、日本の製造業の勢い凄まじく、かつ日本に対する風当たりも強く、テレビニュースでアメリカ市民がハンマーで日本の電気製品を叩き壊すシーンを目の当たりにして衝撃を感じていた。
NHKも「電子立国日本の自叙伝」という特集を組み、そこでは完全自動化された三菱のクリーンルームが放送され、日本のエレクトロニクスの実力を喧伝していた。
しかし、実はすでに1990年に入り、状況が着実に変わりつつある中で、日本の対応力の低さが露わになってきていたことに気がついていた人は少ないと思う。しかし、例えば、パソコンでは無敵を誇ったNEC製PC98シリーズからIBM互換DOS/Vへとシフトしていき、大学ではPC-UNIX (LinuxやFreeBSDoなど)が理系の研究室の片隅で組み立てられ、1994年にはMosaicというブラウザでまだ数える程度しか存在しなかったWebサイトを見ることが出るようになてきていたのだ。
本書は、その中で、特に日本の電機メーカーを調査し、このままでは日本のエレクトロニクス業界が衰退することを警告していた。
特に、日本のソフトウェアエンジニアリング軽視を強く批判していた。
そして、その批判はいまだに当てはまる。日本はソフトウェアエンジニアリングがいまだに後進国的だ。おそらく、ITゼネコン的な体質が抜けきれない日本のシステム開発マーケットの問題と、その体質をリードしてきた世代(主に団塊の世代)の問題だろうと思う。後者はすでに現役から引退しており影響力が薄くなっている今が、まさに日本のITが大きく変化できる最後のチャンスなのではないだろうか。
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