「東京の戦争」(吉村昭)・・・・あちこちのすずさん的な東京の少年
この夏NHKで「あちこちのすずさん」という番組をやっていた。
太平洋戦争末期の空襲が日常になった中で、慎ましくありながら、逞しくも日常の幸せを求めるごく普通の市民のエピソードが語られていた。
そのような戦争の中の日常生活が語られるようになったのは、映画「この世界の片隅に」からだが、戦争に対する記憶を持つ人が身近から減ってきていることも原因かもしれない。
本書「東京の戦争」は、当時18歳だった吉村昭さんが東京の日暮里で暮らした日々を「あちこちのすずさん」的に吉村少年の視線で描いている。
下町の生活、上野浅草の寄席や芝居小屋、相撲取り、B29の編隊、中学生活、長野県へのひとり旅、そして空襲と家族の死を、吉村さんらしい歯切れの良い文書で描写されている。
この本を読んで、また一つ戦争当時の東京での人々の暮らしに対する理解が深まった。
価格:540円 |