1970年代生まれの外資系IT企業エンジニア(関西在住))です。
様々な人々の叡智からの学びを通して、経済的独立の実現を目指します。
日々の思考の糧となる書籍を紹介します。


「岡崎に捧ぐ」(山本さほ著) 挫折からの回復

作者の小学校時代から漫画家になるまでのエッセイ漫画。

小学時代は元気で遊んでいた毎日だったが、中学・高校と少しずつ現実の壁のようなものに突き当たり、美大受験も2年浪人し結局あきらめ逃げ出し、もがきながら漫画家になるという成長物語である。

人生逃げ出したくなる時もあるし、実際に逃げ出すことも多いかと思いますが、逃げ出したことは、人生の節々に思い出されて辛いことも多い。山本さほさん自身のそのような辛さ・苦しさを経験が漫画に描かれている。

正直、決して器用とは思えない歩みであるが、その苦しい挫折からの回復の道程は、私もかつて迷い、しかも未だに迷っているものとして、共感を感じる。

 

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「帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる 」戸高 一成 (著), 大木 毅 (著)

呉の大和ミュージアム艦長の戸高氏と昨年(2019年)評判の高かった岩波新書独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」 の著者である大木氏の対談集。

 

私よりも約10年年長の世代は、先の大戦の当事者達に直接話を聞ける最後の世代と言える。1980年代には戦争中の士官クラスがまだ元気で、先の戦争についても落ち着いて振り返ることができるようになった時代になり、当時若手だった戸高氏と大木氏が当時の様々なエピソードを振り返りながら帝国軍人について語り合っている。

この本で初めて知る事実も多く、先の大戦についてはまだまだ勉強不足であることを実感する。

 

特に、陸海空の自衛隊の中で、「我々は旧軍の後継者である」という自覚を、海上自衛隊が持っていることは初めて知った。大日本帝国海軍は戦後解体されたと理解していたのだが、実際は、第二復員省として海軍の組織は維持され、かつ外地からの復員業務で旧軍の艦船でオペレーションを継続し、また、機雷掃討作業で長きにわたり組織運営が維持され、保安庁を経て海上自衛隊になったこと、将官・士官達も戦後海上自衛隊で武官として任務を継続していたことなどは初めて知った事実である。現在の自衛隊は旧日本軍とは独立の組織だと思っていたのだが、海上自衛隊に関してはそうではなかったのだ。また、それは海上自衛隊旗が旧海軍の旭日旗を継続使用していることからも明らかである。なお、継続使用を承認したのは吉田茂であると本書の中で述べられている。

 

また、ミッドウェイ海戦についても、「滄海(うみ)よ眠れ」(澤地久枝著)が、海軍側が隠そうとしているミッドウェイ海戦現場での捕虜虐待についても初めて知った。この本の電子化を望みます。

 

他にも、源田実についても批判的な部分もあり、この部分はもっと知りたい。何かと英雄的に扱われ、戦後国会議員になっている源田実氏だが、特攻に肯定的であったとか、台湾航空戦についても、それを批判する情報を握りつぶしたりいたらしい。

 

 

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戸井 十月「小野田寛郎の終わらない戦い」

YouTubeで、小野田寛郎を扱ったNHK特集を観た。

小野田寛郎といえば、戦後約30年間フィリピンのルバング島のジャングルで生き延び、1972年に日本に帰還したことで知られている。帰国後、今の日本に嫌気をさしたのか、日本を去りブラジルで牧場経営を立ち上げた人である。

 

撮影は2002年の日本であるが、小野田は晩年に日本で「自然塾」を開催し日本の若い子供たちに自然で生きるたくましさを伝えている活動をしていたようだ。

驚いたことに、2002年の時点で小野田寛郎はパソコンを使って文書を書いていた。さすが、陸軍中野学校出身の情報将校である。老いてもなお老いを感じさせない活力だ。

本書は、その小野田の人生のドキュメンタリーである。

 

今の日本に何が失われているのかを考えるヒントになるだろう。

 

www.youtube.com

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鴻上尚史「不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか」

先の大戦の後期、昭和19年10月のレイテ沖海戦(捷一号作戦)の敷島隊から始まる特別攻撃隊いわゆる特攻は様々な見解があるが、基本は否定すべき過去の出来事として扱われてきたと思う。

ただ、最近の風潮として、特攻を美化する傾向が多くなっている気もする。当事者の心情を美化し、特攻をやむなしと肯定することはあってはならないと私は思う。

 

しかし、特攻とは過去のある時期に発生した特殊な出来事だったのだろうか?私はそうは思えない。特攻を指導し、特攻を受け入れてきた人々は我々と同じような感覚を持った普通の人々の延長にあると思う。そして、その特攻を巡る意思決定や行動は、実は現在の日本にもいまだに生き残って日本の文化の根底にある。特攻を生んだものが日本の組織的な文化である以上、個人で抗うことは絶望的に難しい。だからこそ、サラリーマンの自殺、過労死が我が国ではあとを立たないのではないか。

 

本書の主人公である佐々木友治さんはフィリピンにおいて9回出撃して生き残ったという。一方、特攻を指導した高級将校は、部下を道具として扱い、最後には己の延命のため部下を見捨て逃亡までした。許されるべきではない。しかし、日本社会では同じようなことが、今日もあちこちで起きているような気がしてならない。

 

戦争は遠い過去の話ではなく、今日も目の前に存在するのだ。

 

先崎 学 「うつ病九段」(コミック版)

将棋プロ棋士の先崎九段のうつ病の闘病記が3年ほど前に出版され話題になりましたが、今回はそれを漫画化しより多くの読者に読みやすい形になりました。

 

うつ病になることは、身体的・精神的にだけなく社会的にも本人及び周囲の人々に大きなインパクトを与えます。今回は、プロ棋士という特殊な世界とはいえ、いかに社会復帰に向けて、紆余曲折を経ながらたどり着く様子が描かれています。

 

最近、メンタルが不調になる人々が、本当に身の回りで多く、そう言った人たちにもこのようなうつ病経験者の本は非常に参考になるところが多いと思う。

 

本書の最後の部分で、先崎氏が中学校の時に受けていた「いじめ」について思い出すシーンがあり、本人にとって(もちろんご家族にとっても)大変な状況でも将棋という世界で生きる道を見つけることができたことが、本人の心の芯になっていることも初めて知りました。この最後の部分は、本書のメインテーマである「うつ病」からの回復と重ねて見ることができます。そして、「いじめ」を克服する原動力も、今回のうつ病からの回復の原動力も、先崎氏の将棋に対する思いだということがわかる。

 

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福満しげゆき「妻と僕の小規模な育児」

福満しげゆきといえば「僕の小規模な失敗」が有名であるが、その中で描かれている、どうしても普通の人々が経験する平和で楽しい生活から脱落せざるを得ない小心でコミュ障な性格を持った主人公を見ていると、他人とは思えない親近感を覚えてしまう。と、書くと少し恥ずかしい気もするが、正直な感想だ。

 

しかしながら、「僕の小規模な失敗」は、結局のところ、自分の夢である漫画家というキャリアと共に愛する可愛い妻をゲットするというある種の成功譚とも言えるのだが、自分も結局のところ、サラリーマンとして比較的安定した給料をもらい同期の中から可愛い女の子を妻にできたというところで、福満しげゆき氏と自分をつい重ねて見てしまう。(と書くと大げさだが、同世代とか、高校の時柔道をやっていたとか、そんな小規模な共通項で親近感を持つ程度であるのだが。)

 

そして、福満しげゆき氏も一般メジャー誌で連載を持つようになり生活も安定し、そして「妻」とも子供をもうけ、育児を始めるというのが、この「妻と僕の小規模な育児」である。

 

私自身子供時代を振り返ると転校生(小学校で二回)や生来の内向的な気質で何かと楽しく無いことも多かったと思うので、そんなことは、できるだけ子供には味わってほしく無いと思いつつも、世の育児漫画や書籍では、そう言った自分に近い視線での作品が少ない。しかし、この「妻と僕の小規模な育児」は、やはり色々とそれらの世の中の育児漫画には無い、福満しげゆき氏独特の多少不安が多い小規模な視線での記述が多く、参考になるとは言わないですが、こう言った不安や悩みを持つのは自分だけでは無いのだなという気分にさせてくれます。

 

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鈴木 敏夫「禅とジブリ」

禅とジブリの組み合わせの意外感に釣られて買ってしまった。

 

鈴木敏夫は元アニメージュの編集長で長年ジブリで宮崎映画のプロデューサーで、ジブリファンならお馴染みであろう。NHKプロフェッショナルにも出演していたし、岩波新書で「仕事道楽」という宮崎・高畑との仕事について語った本でも有名だ。私も「仕事道楽」は、自分自身の仕事に悩んでいた時に読んで、全く参考にならないくらい仕事を楽しんでいる鈴木敏夫に激しく羨望したことがある。もっとも、羨望したところで何も変わらず、理不尽な現実の仕事の辛さが減るわけでも、また氏の本で気分が楽になることもなかった。宮崎や高畑の強烈な個性に、ただ圧倒されただけだった。

 

禅の有名な言葉に、「日々是好日」という言葉がある。毎日が良い日となるよう努めるべきだと述べているとする解釈や、さらに進んで、そもそも日々について良し悪しを考え一喜一憂することが誤りであり常に今この時が大切なのだ、あるいは、あるがままを良しとして受け入れるのだ、と述べているなどとする解釈がなされている。(日日是好日 - Wikipedia)

 

本書を通じて、宮崎駿は過去を忘れて、それゆえに常に新人のように新作に苦しみながら(?)作品を作っていくことが鈴木氏に述べられており、まさに、禅の「今ここに生きる」を体現していると対談相手の禅僧からも指摘されている。

 

振り返ると、自分は常に過去の辛かった事にこだわったり、その経験を元に色々と周囲に注文をして、それがその過去を知らない人々からは単なるクレームと受け止められて面倒な、そして心理的には辛いことも多かったと思う。結果として、それで苦労してきた部分もある。

 

今思うと、過去に縛られては本当にいけないのだなあと思う。このような態度は禅に限らず、「メンタルが強い人がやめた13の習慣」(エイミー・モーリン)と言った最近の心理カウンセリング本にも「07「過去を引きずる習慣」をやめる」べきと指摘されているので、現代では広く知られている生きるヒントのようなものであろう。しかし、中々実践できない自分がいるのであるが・・・。